《10月22日(土)-1》
大震災から226日目……

朝起きて、まず線量計を見た。
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娘を見送って、僕は呟き始めた。

【この日呟いたこと……】

8:33
只今京都御所近く。時代祭は雨につき明日に順延。鞍馬の火祭りは午後6時から。


今夜、僕は、47年ぶりに鞍馬へ行く。47年前は親父に連れて行かれた。その親父の49日を先日済ませた。今日は娘と向こうで待ち合わせている。
こんな日ぐらい、パソコンから離れればいいのに、あんまり低くないこの部屋の線量がいけないのだ。
9:56
セシウムを体に取り込まないようにするためにナトリウムを採れって、僕、医者からできれば塩分摂取0にしろくらい言われているのに。3.11以来、合併症にさせられちゃったようなもんだ。


あんまり気の利いた呟きじゃあない。でも、このところのなんとも落ち着かないこの感覚を、合併症になぞらえて考えてみたいと、ずっと僕は思っている。

“測ってガイガー!”のサイトで、この近所の測定地点を探してみた。
そしてふたつ見つけた。
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僕は線量計も持って部屋を出た。
まずは鴨川の橋の上。サイトでは一ヶ月以上前の9月10日、0.05μSvと低い数値。あまり聞いたことのない線量計であったが……
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REDAXは相変わらず高い。信頼しているシンチのDoseもしかし0.10μSv、おいおい、全く違うじゃないか。

もう一箇所、相国寺の門前。サイトの数値は0.08、これは政府公認、堀場のRadiの計測数値。
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ほう、やっぱり堀場とDoseは同じような値を出す。

結局のところ、なんだか落ち着かない測定結果で、気分は晴れない。

昨晩の深夜にデジカメに収めた画像なのだが、ネットでこんな番組を見ていたのだ。
ニコニコ生放送 「緊急報告!アナタの食べ物は大​丈夫?~放射線による食品汚染​の実態に迫る~」
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この番組で早野龍五氏が使用していたスライドが、朝、ネットに公開されていた。
 ⇒http://www.slideshare.net/RyuHayano/nicohou
この中で、放射線スペクトルの読み取り方が解説されている。

放射性分子が崩壊する時に出すエネルギーは、核種によって違う。そこで、どれだけのエネルギーの放射線を何回拾ったかによって、放射性物質の汚染の種類と、汚染度合いを測るというのが測定器の仕組みである。

ただ、どんなに優秀な測定器でも、検体から放出される放射線を全て拾えるわけではない。そのくらいのことは知っていた。しかし、それは100個出た放射線のうち何個捉えることができるかというようなことだろうと思っていたのだが、どうもそんな単純なことではなかったらしい。

確かに検体から出た放射線の何%かは測定器に当らない。これを早野氏は「ハズレ」という。また測定器に当っても、そのまま抜けていってしまう場合があり、これを「透過」という。測定器は「ハズレ」にも「透過」にも反応しない。

放射線が測定器に当った場合、測定器はどれだけのエネルギーを持った放射線が何個当ったかを記録することになる。そのデータは、横軸にエネルギー、縦軸に個数を表示するグラフにされる。つまり「横軸の数値」×「縦軸の数値」が放射線の強さの総量となるわけだが、重要なのは横軸のどの場所に山(ピーク)があるかによって、核種が特定するということなのである。

しかし、測定器が核種固有のエネルギーをきちっと記録するのは、放射線が測定器にちゃんと当った場合のみで、これが「大当たり」なのだが、ところが必ずしもきちっと当らない。ちょっと当って滑って逃げていってしまったりする。これを「コンプトン散乱」、早野氏は「当て逃げ」と呼ぶ。この「当て逃げ」は、どのくらい滑ったかによってエネルギーの数値はまちまちである。もちろん「大当たり」の場合よりは小さいが。

もうひとつ、測定器とは反対側の鉛の壁に跳ね返ってその後で測定器に当る場合もあって、これを「とばっちり」と早野氏は名づける。エネルギーはもちろん「大当たり」よりだいぶ低いが、解説のグラフを見る限り、エネルギーの数値はおおむね一定のように思われる。
氏はこれ以外の場合を説明してはいないが、きっと「とばっちり」の中にも、さらに測定器にちょっと当って滑っていく奴もあるに違いない。

加えて、放射線の核種は一種類ではない。それらが複雑に絡み合っているので、明確な数値を読み取ることなど不可能ということのようだ。

ともかく、例えばもしセシウムに汚染されているのならば、グラフの横軸のセシウム固有のエネルギー位置にピークが現れるはずである。しかし、単純にその位置の縦軸がセシウムの量を著しているわけではない。そこからセシウム以外の分を差し引かなければならない。
バックグラウンド(空間放射線)の影響は鉛の器の中に検体を入れることで遮断できるが、問題は検体に自然に含まれるカリウムの「当て逃げ」で、これをきちんと読み取って引いてやらないと、正確な数値が得られないということらしいのだ。

もちろん、実際の測定では、もっと複雑な要素があるに違いない。この番組では、そのくらい測定は難しいものだということも説明したかったのであろうか。その点はなかなか面白かった。しかしである。
どうも番組の場を支配する緩い雰囲気は、間違って測定するとセシウムの数値を高く評価してしてしまいますよ、最近結構そういう測定が多くて、本当はそれほど汚染されていないのに、だから素人の測定は弱っちゃうよね、みたいな感じに満ちていた。

そこで、部屋に戻った僕は、またPCからツイッターで早野氏にこんな質問をしてみたのである。

13:04
セシウム自体の「はずれ」とか「透過」とかはどのように拾っているのでしょうか?


カリウムの影響を考慮できないような人が計測しているというのならば、「はずれ」とか「透過」を忘れて、数値を低く発表する場合だってありそうなことではないか、僕はそう思って敢えて聞いてみたのである。
すると早野氏から、すぐに次のような返信があった。
「当たり/(はずれ+透過+当たり+当て逃げ+とばっちり)= 検出効率」
フォローの多い有名人から返信があったりすると、途端に何人かが反応する。
「先生質問!楽しい物理の授業」
いったいこういう方は、これで何が言いたかったのだろう。よく分からないが、僕は少し違うことを考えていたのである。
僕はさらに続けて聞いてみた。

13:22
それ(検出効率)は計測機器によって違うのでしょうか。核種によっても違うのでしょうか。


残念ながら氏からもう返事は無かった。
ネットで検索したら、こんな記述を見つけた。
「線源から放出される放射線の数に対する検出器の計数値の比。Sを線源の放射能(Bq)、rをスケーラ等の放射線検出器で得られる計数値cps(カウントパーセコンド)とすると、検出効率εはε=r/Sで与えられる。検出効率εは、幾何学的影響(線源と検出器間の距離)、線源の影響(線源の自己吸収)、検出器の影響(検出器自身の固有の効率)等の種々の因子を含む」
答えていただけなかった理由がわかるような気がする。つまりかなり複雑なのだ。ツイッターで簡単に答えられるようなものではなさそうである。
しかし、僕が問題だと思うのは、検出効率が「検出器自身の固有の効率」にも影響されるということだ。これは、いったい誰がどうやって決めるのか。どんなに正確にスペクトルを読み取っても、検出効率が任意では、それが動いてしまえば全く違う結果がでるということではないか。

例の堀場の線量計は、低めに出るように調整されているという噂が絶えない。食料の汚染を測るためにあちこちで使われ始めた測定器の検出効率に、もし仮に恣意的な要素が加味されているとしたら、そんなことがあっても不思議でないような日本なのである。

僕は全くの素人である。間違っていたら、是非ご指摘いただきたい。

13:33
(合併症の続き)3.11以来、沖縄のことがなかなか考えられなくなった。合併症にたとえてみたくなった。3.11以前は「オキナワ」と「ゲンパツ」は同じ図式で考えられたのに、「フクシマ」は同じ処方箋では処理できなくなったというようなこと。いずれブログに書く。

13:39
(合併症の続き、その2)考えてみれば、一役者でありたいと思うことと沖縄を考えること、そして芝居と音楽、どちらも処方箋の違う病にかかった合併症だったのかもしれないなあ。



僕はやっとパソコンを閉じて、鞍馬へ向かった。もちろん線量計を持って。