08/06/20 : 都立駒場高校 生徒総会 《その1》
カテゴリ: '75年都立駒場生徒総会
僕が18歳の時のことです。
東京都立駒場高校の、新築されたばかりの体育館で、生徒会主催の総会のようなものが開かれていました。確か春ではなかったかと思うのですが、定かではありません。2年生が運営進行していたので、もしかすると3年生が引退した後の秋のことだったのかもしれません。
舞台では、2年生の司会者が、なにやらしゃべっています。総会といっても、悪がきどもや、世の中を斜に構えて見ているような連中は、いつものごとく欠席、たぶんどっかの喫茶店で「煙草」でもしていたのでしょう。ただ、何故か僕は、その日魔がさしたのか、喫茶店の「煙草」には参加せず、体育館のうしろの方いたのです。
体育館にちゃんと集まった連中が真面目なのかといえば、そうでもありません。僕の周りでは紙飛行機が飛び交っていましたし、前の方はいざ知らず、後ろの3年生のほとんどは、今壇上で行われている議論なんか、ちっとも聞いていませんでした。
「何か質問はありませんか」
司会者が、性能の悪いマイクを通して問いかけます。形式的な問答、儀式みたいなもんです。
通常なら、「それでは、散会とします」と、司会者が力なく宣言して、生徒たちは、この退屈なだらだらとした時間から解放されるはずでした。
ただ、その日の僕は、魔がさしていたのです。僕は、体育館の舞台から一番遠い真後ろで、「ハイ!」と元気よく手を挙げて立ち上がったのです。
質問なんかありません。だいたい今の今まで、何を議論していたのかさっぱりわからない、だって何も聞いちゃいないで、紙飛行機を飛ばしていたのですから。
「はい、高山さん、どうぞ」
僕は、2年前の文化祭で、演劇部の主役に抜擢されて以来、ちっとも人気ものではなかったが、学校では有名人でありました。その舞台を見ていない下級生も、なぜか僕を知らないものはほとんどいませんでした。
体育館の真後ろから、演台に向かって、僕はゆっくりと歩き始めました。モーゼとまではいきませんが、すっと、生徒たちの海の真ん中に、人ひとり通れるほどの道ができました。誰かが、手拍子を始めました。僕がほぼ半分ほど進み、体育館の中央に達した頃には、その手拍子は、じゃっじゃっ、という大きな塊となり、舞台脇の階段を昇るにいたっては、大音響で体育館に鳴り響いていたのです。
僕が壇上に上がると、手拍子はだんだんと小さくなっていきました。僕は、ほんの少し首をすくめて、所定のマイク位置からちょっとズレた位置まで進み、そこで、すくめていた首を、すっくと伸ばして正面を見据えました。
ぱらぱらとなっていた手拍子の残響と、ひそひそと交わされていたおしゃべりのかすかな喧騒の束が、その時ピタッと止み、一瞬間、完全なる静寂に体育館全体が包まれたのです。
《その2》へ続く
本記事は、書きためてある「過去のノート」のコピペではありません。会社の業務、並びに新作「注文の多い料理店」の歌の練習に、たった今から出かけなければならず、したがって一気に書きあげることママならず、やむなく連載記事といたしました。
東京都立駒場高校の、新築されたばかりの体育館で、生徒会主催の総会のようなものが開かれていました。確か春ではなかったかと思うのですが、定かではありません。2年生が運営進行していたので、もしかすると3年生が引退した後の秋のことだったのかもしれません。
舞台では、2年生の司会者が、なにやらしゃべっています。総会といっても、悪がきどもや、世の中を斜に構えて見ているような連中は、いつものごとく欠席、たぶんどっかの喫茶店で「煙草」でもしていたのでしょう。ただ、何故か僕は、その日魔がさしたのか、喫茶店の「煙草」には参加せず、体育館のうしろの方いたのです。
体育館にちゃんと集まった連中が真面目なのかといえば、そうでもありません。僕の周りでは紙飛行機が飛び交っていましたし、前の方はいざ知らず、後ろの3年生のほとんどは、今壇上で行われている議論なんか、ちっとも聞いていませんでした。
「何か質問はありませんか」
司会者が、性能の悪いマイクを通して問いかけます。形式的な問答、儀式みたいなもんです。
通常なら、「それでは、散会とします」と、司会者が力なく宣言して、生徒たちは、この退屈なだらだらとした時間から解放されるはずでした。
ただ、その日の僕は、魔がさしていたのです。僕は、体育館の舞台から一番遠い真後ろで、「ハイ!」と元気よく手を挙げて立ち上がったのです。
質問なんかありません。だいたい今の今まで、何を議論していたのかさっぱりわからない、だって何も聞いちゃいないで、紙飛行機を飛ばしていたのですから。
「はい、高山さん、どうぞ」
僕は、2年前の文化祭で、演劇部の主役に抜擢されて以来、ちっとも人気ものではなかったが、学校では有名人でありました。その舞台を見ていない下級生も、なぜか僕を知らないものはほとんどいませんでした。
体育館の真後ろから、演台に向かって、僕はゆっくりと歩き始めました。モーゼとまではいきませんが、すっと、生徒たちの海の真ん中に、人ひとり通れるほどの道ができました。誰かが、手拍子を始めました。僕がほぼ半分ほど進み、体育館の中央に達した頃には、その手拍子は、じゃっじゃっ、という大きな塊となり、舞台脇の階段を昇るにいたっては、大音響で体育館に鳴り響いていたのです。
僕が壇上に上がると、手拍子はだんだんと小さくなっていきました。僕は、ほんの少し首をすくめて、所定のマイク位置からちょっとズレた位置まで進み、そこで、すくめていた首を、すっくと伸ばして正面を見据えました。
ぱらぱらとなっていた手拍子の残響と、ひそひそと交わされていたおしゃべりのかすかな喧騒の束が、その時ピタッと止み、一瞬間、完全なる静寂に体育館全体が包まれたのです。
《その2》へ続く
本記事は、書きためてある「過去のノート」のコピペではありません。会社の業務、並びに新作「注文の多い料理店」の歌の練習に、たった今から出かけなければならず、したがって一気に書きあげることママならず、やむなく連載記事といたしました。