三太郎は、企画室の冷蔵庫を勝手に開けて、手前に並んでいる発泡酒には目もくれず、一番奥に隠してあったエビスを引っ張り出して飲んでいる。

要するに、原罪ってやつにがんじがらめになってるんだってポーズつけてるわけですやん。

なんだ、その語尾は。お前はいつから関西人になったんだ。そうか、お前は、このブログの最初の方しか読んでねえな。

あっ、あんたはん、自分でブログって認めなはったなあ。

人を指差すのやめろ。

あんな重ったるい文章、誰が好き好んで読みますかいな。お客さんにブログ、続けて読んでもらお思うたら、もうちっとサービスしなはれ。

てめえは客じゃねえだろうが。

おいどんは、何者でもなかとですばい。

三太郎は、エビスをグッと飲み干して、空になったアルミ缶を、俺に向かって投げてよこした。三太郎を乗せたアルミ缶は、俺の右耳をかすめ、俺の背後にあるゴミ箱に、三太郎ともども吸い込まれていった。

はたして、三太郎は実在する人物なのか、それとも、この「ブログ」にのみ登場する空想のキャラクターなのか、そんな詮索は無駄である。トリックスターは、易々と現実と虚構の境界を越える。奴にとっては、過去と未来の区別もない。
このゴミ箱は、いったいどこにつながっているのか。虚構の世界へか、過去へか、未来へか。あるいは、現実へか、すると、今俺のいるこの世界が虚構なのか。

しかし、眼前に拡がる空間が現実であろうが虚構であろうが、この歳になった僕にとって、過去は、未来よりもずっと重く現在の僕にのしかかっている。「お客さん」にどう思われようと、三太郎に「原罪のポーズ」とひやかされようと、もう少し、この「ブログ」の埋め草に、僕の過去を使おうと思う。

情けない。三太郎がいなくなると、俺はすぐに僕になる。

三太郎、今度は、おとといか、あさってくらいにやってこい。

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