08/07/07 : 《1985年3月12日のノート》
カテゴリ: 《過去のノート》
「疲れているし、やらなければならないこともいろいろあるし……」
そう言ってあいつの誘いは断った。
それなのに、Aに誘われてノコノコ下北沢まで出かけていった。
彼女の話は相変わらず自分勝手だ。自分自身に嘘もついている。そう指摘すればそれはわかっていると言う。所詮愚痴だ。その愚痴を聞いてやって、それで少しでも気持ちが晴れるというならそれでいい。彼女にしたってそれ以上の事を僕に期待してはいまい。
「冗談じゃないわよ、だんだん腹がたってきた。あんなにつくしてやったのに、あいつのおかげでどれほどあたしが苦しい思いをしてきたか、それにくらべたらあたしの二年間の間違いくらい、大きな気持ちで許してくれたっていいじゃない。自分のこと棚に上げてさ、どうして男はよくて女はいけないの、冗談じゃないわよ。」
寂しかったこと、苦しかったこと、そんなそれまでの話を、全部ご破算にするかのように、冗談めかして言った彼女だったが、その声には説得力があって、それまでのどんな深刻な話しより、ずっとリアリティーがあったのだ。男の理屈を反古にする力。開き直った女の、実に魅力的で堅牢なるレトリック。
〈不用意に抱かれた女は無罪放免、ならば不用意に抱いた男の罪の重さは・・・〉
おとといの事。あいつと飲んでいた。
「この前、Aと寝たよ」
唐突にあいつがそう言った。だがすぐに
「止めよう、世界の話をしよう」
これについてはそれだけのこと。あいつの体のどこを探しても、もう〈力〉など残っていなかった。
「なんか、すっきりしちゃった。カラオケいこうよ。」
〈俺に何ができるというのか。お前さんは、徹底的にあいつの「女」なのだ・・・〉
「ああ、今日のところはどこへでもお供しましょう。(それが男の責任だというのなら)」
そう言ってあいつの誘いは断った。
それなのに、Aに誘われてノコノコ下北沢まで出かけていった。
彼女の話は相変わらず自分勝手だ。自分自身に嘘もついている。そう指摘すればそれはわかっていると言う。所詮愚痴だ。その愚痴を聞いてやって、それで少しでも気持ちが晴れるというならそれでいい。彼女にしたってそれ以上の事を僕に期待してはいまい。
「冗談じゃないわよ、だんだん腹がたってきた。あんなにつくしてやったのに、あいつのおかげでどれほどあたしが苦しい思いをしてきたか、それにくらべたらあたしの二年間の間違いくらい、大きな気持ちで許してくれたっていいじゃない。自分のこと棚に上げてさ、どうして男はよくて女はいけないの、冗談じゃないわよ。」
寂しかったこと、苦しかったこと、そんなそれまでの話を、全部ご破算にするかのように、冗談めかして言った彼女だったが、その声には説得力があって、それまでのどんな深刻な話しより、ずっとリアリティーがあったのだ。男の理屈を反古にする力。開き直った女の、実に魅力的で堅牢なるレトリック。
〈不用意に抱かれた女は無罪放免、ならば不用意に抱いた男の罪の重さは・・・〉
おとといの事。あいつと飲んでいた。
「この前、Aと寝たよ」
唐突にあいつがそう言った。だがすぐに
「止めよう、世界の話をしよう」
これについてはそれだけのこと。あいつの体のどこを探しても、もう〈力〉など残っていなかった。
「なんか、すっきりしちゃった。カラオケいこうよ。」
〈俺に何ができるというのか。お前さんは、徹底的にあいつの「女」なのだ・・・〉
「ああ、今日のところはどこへでもお供しましょう。(それが男の責任だというのなら)」