「わが友、読者よ!
 君なくば、
 我はそも何ぞ!
 感ずるところみな独りごとに終わり、
 わが喜びもことばを知らず。」
        (「作者」ゲーテ)

独りごと。恋でもしたら、ゲーテの恋の詩(うた)でも読もうか。
やがて父となるようなことがあったとして、そして子供が死んでしまうというような災いに見舞われたならば、「魔王」を読んで悲しみに浸るのだ。
老いてなお気力が残っていたら、「真夜中に」を傍らにおいてまどろむのはどうだろう。
そうして、本当に孤独になった時、君は「竪琴弾き」に何かを思うのだろうか。
しかし、今の僕ときたら、結局何者でも無いから、だからきっと、何も感じないのだ。

ゲーテの逆説と機知。その豊富さ。だが…
「いつも変わらなくてこそ、ほんとの愛だ」といい…
「移ろいやすいものだけを美しくしたのだ」というならば…
美しいものを美しいが故に愛するのは偽りの愛なのか。

ゲーテの多情は矛盾の異名。その全てひとつひとつがゲーテ。
つまり…
「かの一なるもの永遠にして、多に分かたる、
 しかも一にして、永遠に唯一つなり。
 一の中に多を見出だし、多を一のごとく感ぜよ。
 さらば、芸術の初めと終りを会得せん。」

「ともあれかくもあれ、人生はよい!」
そうなのか? 本当に。