三島由紀夫「旅の墓碑銘」。

「……僕はそれらのものに化身する。その瞬間、見る者と見られる者との差別は失せ、すべては等価値になり、調和の中に並存し、世界を充たした僕の不在を、今度はあらゆるものとの僕の存在の聯関が埋めるんだ。こういう世界の深みまで降りてゆかない精神が、どうして作品などという確実な物体に化身することができるものか!」
「そのとき僕の肉体が占めていたほどの確乎たる僕の空間を僕の精神はかつて占めたことがなかったんだ」

三島は極限から戻ってきたのだ。決して越えたのではない。
いや、越えたのかもしれない。しかしいずれにしろ、極限にとどまっていた訳ではない。
極限を見たのだとしても、三島はそこから逃げ帰ってきたのだ……。

そんな「感想」を見つけ出して、ようやく僕は、穏やかにしていられる。