雪に埋もれた旅館の狭い六畳の和室で、ひとりただ読み耽る。

「ああ、汝、堤宇子、すでに悪魔の何たるを知らず、いわんやまた、天地作者の方寸をや」……。
悪魔。
「右の眼は『いんへるの』の無間の暗を見」、「左の眼は『はらいそ』の光のうるわしと、常に天上をながむる」……。
「弥陀も女人も、予の前には、皆われらの悲しさを忘れさせる傀儡のたぐいにほかならぬ」……。

だが、しかし……

棺桶然とした暗い部屋でも、窓を開け放てば眼を痛める程の光、清新な冷気の向こうには箱庭の如きスキー場が眩しく見える。そこに友を探すこと不可能。遠く小さく蠢く原色の者たち、あたかも傀儡のように。