「鼠小僧次郎吉」。
300円着服してクビになった国鉄職員に対して、同情を抱くべきであるのか否か。たとえ実際の出来事だとしても、よほど身近な者でなければ誰も同情などしないだろう。要するに喜劇的なのである……。

「尾生の信」。
悲劇的状況に妙に動かされる。いや違う、動かされているのではないらしい。停滞させられているのだ。
尾生が待っていたもの、例えば、あのウラジミールとエストラゴンが待っていたもの。
それらに比べて僕の待っているものは、ちっとも悲劇的ではない。きっとその有様は、解雇された国鉄職員の、あての無い怠惰な職探しに近いものだろうから。
要するに喜劇である。