形而上の諸問題に、完全なる死生観と宇宙観をもって解決を与えたとしても、この不可解なアンニュイは無くなりそうもない。形而上学の不可能がもたらす懐疑主義的アンニュイ、そんな高尚なものではありませんて。もっと俗、俗すぎて頭が痛くなる。

昨日は一行も書見いたさなんだ。いい芝居したいんだよ、つまるところさ。
阿呆。センチなアンニュイから表現など生まれるか。要は意志の問題。
おもわずため息をして「こんなこと書きたかったんじゃないんだが」
石川淳はペンで考える。それがどうした。つまりね……、知るか、そんなこと。
「アーでもネー、コーでもネー」とは、誰かさんの口癖。

そうして僕は薄笑いを浮かべてみる。冗談を言ってみる。だが、僕の横隔膜はいつもよりちょっと上の方で硬直している。

何となく……
実はこいつが一番のくせ者で、むしろ大いなる悲劇にみまわれちまったほうが楽なのである。太宰治はそのことをよく知っていた。