「僕を憫れんで呉れ!……さもなくば、僕は貴様を呪うぞ!」
(「或る禁断の書の為めの題詞」ボードレール)

誠実がどこかに飛び去ろうとする。僕の中に憎しみが生まれる事を恐れよなどと、いったい誰に向かって語ろうというのか。白紙だった。ただページの表示だけが忘れ去られた日付のように。何の比喩でもない、単なる象徴の、そのあまりの単純さに僕は目を背けた。僕は〈露骨〉から遠く離れたいと思い始めていた。配列された記号は重量の注釈でしかなかった。僕はそれから逃れるように歩いた。重量は残されたのだが。
しかし……

「そうだ、声が似ているのだ」

声の主も幻であったはずなのに、〈憎しみ〉によって幻は実在と結びついた。
「全てはあの声がいけないのだ」

足元を掘り起こしてみた。すると、僕の感情とは何の脈絡もない石灰色の「過古」が現われた。気が付くと、そこは墓場だった。一篇の叙事詩に過ぎなかった。僕はその心象風景に満足できるはずはなかった。もう、幻影ではないのだ。

僕は再び歩き始めた。だがもはや逃れるためではない。僕には微妙な感受性が影響していたのだ。それはおそらく「風」とシノニムだ。どこまでも墓場は続いている。僕は取り残された重量を握りしめていた。今となっては、重量が消滅するのをただ待つより仕方無いように思われた。