08/10/08 : 《1984年7日4日のノート》
カテゴリ: 《過去のノート》
夜の246を、僕は横浜に向けて車を走らせていた。近頃こいつのエンジンの調子がおかしい。速度を上げて暫く走っていると、時々アクセルとは無関係に回転数が異常に上るのだ。だがそんなこと、知ったこっちゃない。僕はしたたか酔っていた。
(ほら、また始まった…)
車は、僕の意志とは無関係に爆音をあげて加速し始めた。その音に怯えるように、歩道の女が、風に髪をなびかせて振り返った。
(俺のせいじゃない…)
上向きのライトは、一瞬間死人のようなその女の顔を浮かび上がらせたが、直後それは後方へ飛び去ってしまった。僕はエアコンを消し、窓を開け、カーステレオのボリュームを上げた。だが、女の顔の残像は、いつまでたっても消えることがない。しかし、そのカタルシスは快楽であった……。
一日かけて書き終えた日記。クラシックギターの機械的な指の動き。ほんのわずか増えた過去という時間。僕は、このいつ崩れるかわからない静寂の間に、一挙に深淵な苦悩に捉えられてしまえばよいと思い始めた。
「死者の奢り」……
だから、この日読んだ小説の題名を、こうしてノートに書き写すことをしても、昨日までのように、空虚な思いに苛まれることはなかった。無関係な他人の言葉も、ある程度消化出来るように思われたのだ。
だが……
「お前は、娼婦と寝ても、薄汚い大量の言葉をたれ流すのだろう。お前の気に入っている人間性とは、実は動物的な情念と、植物的な想念の出会う地点でしかない。それは生きた人間とは没交渉の『死者の奢り』なのだ。」
結局、躓くのはこうした言葉……。
それは〈深淵〉とは程遠い、揮発性の苦痛だった。
また、性懲りも無く、過去形だけで書かれた日記を、書いて、いる。
(ほら、また始まった…)
車は、僕の意志とは無関係に爆音をあげて加速し始めた。その音に怯えるように、歩道の女が、風に髪をなびかせて振り返った。
(俺のせいじゃない…)
上向きのライトは、一瞬間死人のようなその女の顔を浮かび上がらせたが、直後それは後方へ飛び去ってしまった。僕はエアコンを消し、窓を開け、カーステレオのボリュームを上げた。だが、女の顔の残像は、いつまでたっても消えることがない。しかし、そのカタルシスは快楽であった……。
一日かけて書き終えた日記。クラシックギターの機械的な指の動き。ほんのわずか増えた過去という時間。僕は、このいつ崩れるかわからない静寂の間に、一挙に深淵な苦悩に捉えられてしまえばよいと思い始めた。
「死者の奢り」……
だから、この日読んだ小説の題名を、こうしてノートに書き写すことをしても、昨日までのように、空虚な思いに苛まれることはなかった。無関係な他人の言葉も、ある程度消化出来るように思われたのだ。
だが……
「お前は、娼婦と寝ても、薄汚い大量の言葉をたれ流すのだろう。お前の気に入っている人間性とは、実は動物的な情念と、植物的な想念の出会う地点でしかない。それは生きた人間とは没交渉の『死者の奢り』なのだ。」
結局、躓くのはこうした言葉……。
それは〈深淵〉とは程遠い、揮発性の苦痛だった。
また、性懲りも無く、過去形だけで書かれた日記を、書いて、いる。