09/01/04 : 《1984年7月16日のノート》
カテゴリ: 《過去のノート》
〈電話のベルが鳴っている〉 そう思って部屋のドアを開ける。
〈空耳だ……〉 再びベットに横たわり眼を閉じる。
〈また電話のベルが鳴っている〉 狂人のように跳ね起きドアを開け放つ。
〈空耳だ……〉 そしてそっとドアを閉める。〈今朝からこれで何度めだろう〉
静寂の空間に、今もベルは鳴り続けている。
〈だがもう決してこのドアを開けることはすまい〉
あのドアの外にあるのは、理念なくしては解決不可能なアンチノミーの大群、そう思い込めば少しは楽になる。そうして眠ろう。眠ってしまおう……。
それならば、《夢》でも口ずさみましょうと、見知らぬ少年が歌う。
かわいい君よ 眠ろうボクと
すべてを捨てて 夢の世界で愛し合おう
あの日のように かわいい君よ 眠ろうボクと
束の間の妄想はかえって苦痛、僕は少年の首を絞める。絶望? そんなものは無い。何も無いのだ。満たされていないのではなく、満たすべき時間も空間もない。「質料」が無いからではなく「形式」そのものが無意味なのだ。
〈アラユル コトバ ニ あんちのみー ガ アリ……〉
あのドアすら、もしかすると幻なのかもしれない。「対象」が存在しているのか否か、それも判らぬほど、僕はすっかり麻痺している。だから、という訳でもなく、眠ろう、眠ってしまおう。あのドアのように、あの電話のベルのように、きっと夢さえ苦痛だろうから、夢さえ見ずに、唯、眠ろう。それは死にも似て、眠ろう、眠ってしまおう。
〈空耳だ……〉 再びベットに横たわり眼を閉じる。
〈また電話のベルが鳴っている〉 狂人のように跳ね起きドアを開け放つ。
〈空耳だ……〉 そしてそっとドアを閉める。〈今朝からこれで何度めだろう〉
静寂の空間に、今もベルは鳴り続けている。
〈だがもう決してこのドアを開けることはすまい〉
あのドアの外にあるのは、理念なくしては解決不可能なアンチノミーの大群、そう思い込めば少しは楽になる。そうして眠ろう。眠ってしまおう……。
それならば、《夢》でも口ずさみましょうと、見知らぬ少年が歌う。
かわいい君よ 眠ろうボクと
すべてを捨てて 夢の世界で愛し合おう
あの日のように かわいい君よ 眠ろうボクと
束の間の妄想はかえって苦痛、僕は少年の首を絞める。絶望? そんなものは無い。何も無いのだ。満たされていないのではなく、満たすべき時間も空間もない。「質料」が無いからではなく「形式」そのものが無意味なのだ。
〈アラユル コトバ ニ あんちのみー ガ アリ……〉
あのドアすら、もしかすると幻なのかもしれない。「対象」が存在しているのか否か、それも判らぬほど、僕はすっかり麻痺している。だから、という訳でもなく、眠ろう、眠ってしまおう。あのドアのように、あの電話のベルのように、きっと夢さえ苦痛だろうから、夢さえ見ずに、唯、眠ろう。それは死にも似て、眠ろう、眠ってしまおう。