〈夢の手記〉
僕は鬱蒼としたジャングルの中を塒へと向かっていた。
頭上には腕のように太い幾本もの蔦が、複雑な模様を織り出していた。その内の特に太い一本は灰色の蛇だった。
突然そこに角の無い鹿が現われ、その大蛇を銜えて、そして猿のように枝から枝へと飛び去っていった。
僕が塒へ着くと、その片隅にさっきの鹿がその巨体を横たえていた。このジャングルの、僕を含めた全ての動物たちが塒を共有しているという観念を、僕はごく自然に受け入れていた。
蛇は鹿に飲み込まれていた。その蛇は未だ鹿の食道の中途にいてもがいているのであろう、鹿の喉は生々しく波打っていた。鹿は、蛇の力がやがて衰えるのを静かに待っていた。それは、あたかも小動物を飲み込んだ直後の蛇の姿だった。
僕は、苦しんでいる蛇に対する哀れみからか、横たわる無抵抗の鹿に向かって、何かひどくあくどい事をしたようだったが、いったい何をしたのか、目覚めた僕がそれを思い出すことを何かが妨げている。蛇は僕に救われたのか、ついに鹿の口からその頭を覗かせ、首をくねらせて鹿の喉笛に食い付いた。鹿は悲鳴を上げた、まるで後悔でもしているかのように。だが、鹿の悲鳴は僕の悲鳴だった。鹿の体内にまだ残されているはずの蛇の胴体に僕の右足が飲み込まれていたのだ。僕は今までのように冷静でいられるはずはなかった。僕は今度は懸命に僕自身の右足を救い出した。見ると、鹿はすでに息絶えていた。蛇は半死半生でぐったりしてはいたが、時が経てばその傷は癒えるに違いないと思われた。
全てがコンクリート色の世界だった。
僕は、何故か僕の喉に引っ掛かっている蛇の堅い皮を、必死に吐き出そうとしていた。そうしながら僕は考えた。「青々としたあの懐かしい草原へすぐにも出て行こう。」それは容易なことのように思えた。なぜなら、僕の今いるこのジャングルは、広大な草原に囲まれた、ちっぽけな長方形の世界なのだから。