人は何故祝福しないのだろう。幸福は拡がらない。幸福とは、当事者だけのものだ。そして外部へ汚物をたれ流しながら、彼らは笑っている。

またぞろ幸福絶対量保存の法則。
〈それは「ほんとうのさいわい」ではないのだよ。〉
「カンパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでもいっしょに行こう。僕はもう、あのさそりのように、ほんとうにみんなの幸のためならば、僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」
「うん僕だってそうだ」カンパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいはいったいなんだろう」
ジョバンニが言いました。

「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」
宮沢賢治。