僕は司会者に決然と言い放ったのです。

君は一体、何を言っているのだ!
さっきまで、この体育館の後ろの方が、どのような状態になっていたか、君はわかっているのか。この台上で、こそこそ話されていた君たちの言葉は、一言たりとも僕らには届かず、結果、何機もの紙飛行機が飛び交っていたのを、君たちも気づかなかったわけではないだろう。
どうすれば聞いてもらえるのか、君たちは何故そのことをまず考えようとしなかったのか。
どんなご立派なことを語っても、聞いてもらえなければ、何にもならないではないか。
見ろ。今、この体育館に集まった者の全てが、この僕の言葉に耳を傾けている。これを、君はどう考えるのか!!

見事でした。体育館の舞台の小ささがどうのこうのという、いまさらいかんともしがたい話題を持ち出して、ただウケを狙ったような話に仕立て上げ、その緩んだ空気に気を許して、思わず言ってはならないシャレを口走ってしまった敵のミス、そこを逃さず捕らえ、ついに隠し持っていた本題を突きつける、敏腕弁護士が仕掛けた罠に、まんまと引っかかった原告側証人は、ただ沈黙するしかないというような、まさに痛快な結末でした。僕こそが数分前に紙飛行機を飛ばしていたという事実も、僕の主張を覆す根拠にはなりえません。君たちの言葉が、この僕にまで、ちっとも届いてこなかったのだよと、そう告げればいいだけのことなのだから。そこに、モラルの問題があるにしてもです。
そうして、体育館は、さらなる喝采に包まれていったのです‥‥

ひどいものです。聞いてもらうことが重要だなどというもっともらしい「本題」だって、ただその場のとっさの思いつきに過ぎなかったのだから。
「ここは、演劇の練習をするところではありません。」
優秀な後輩よ。君の洞察は確かに正しかった。但し、半分だけ。後の半分が間違っていた。
僕は演劇の練習をしていたのではない。あの舞台は、結果的に、僕の一世一代の本番だったのだ。

歓声の中、僕は英雄気取りで颯爽と舞台を後にしました。
しかし、その姿を、苦々しく見送っていたのは、ただ生徒会の役員たちだけではなかったのです。

《その4》へ続く