近くにある背の低い山並みは、もうすっかり真暗なシルエットなのに、その背後にそびえる雪を頂く富士は、遠い日の光を浴びて明るく銀色に光って浮かび上がっている。こんな美しい富士山を、僕は初めて見た。

「ここでは色々な富士山が見られるんでしょうね」
「はあ…」

富士の麓で暮らし毎日富士を眺めている人が、妙に感動している僕を不思議そうに見ている……。

気配は数日前からあったのだが、とうとう今日になって〈あいつ〉はやってきた。予め買っておいたアリナミンの封を切る。肩凝りの薬じゃ効くわけないと思いつつ、名古屋あたりで飲んではみたが、案の定大阪に着いても全く効果は現われない。
とたんに憂鬱になる。