芥川龍之介の、「彼、第二」を読み返していた。そうしたら、その結びの文章の中の一語を、僕は読み違えていたことに気がついた。

「夢の中に眠った僕が現在に目を醒ましているのはどうも不気味でならなかった。」

その「不気味」を、僕は「無意味」と読み違えて、それでそれがひどく心に残っていたのだが、なんとも間の抜けた話だ。なるほど「無意味」などという到って観念的な理由では日本人は死ぬことなどできない。
しかし、「不気味」なら死ぬかもしれぬ。狂気よりも、死を選ぶかもしれぬ。