08/11/03 : 《1985年1月28日のノート》
カテゴリ: 《過去のノート》
「『日記』は事実を書いておく方がいい、と花袋は言っている。こう思ったとか、ああ思ったということよりも、こういうことをした、ああいうことをしたという行為を書いておく方が『日記』というものの本来の性質にかなっている。自己の後年の追懐のためにする上から言ってもその方が便利だ』。私もそのつもりでいたが、事実だけだと何か味気なく、『こう思ったとか、ああ思ったということ』を書き出した。そこに面白味が出てきたが、先日、日記がさっぱり書けなくなった。その原因は、思うにその『面白味』に対する嫌悪にあったのだから、おかしい。」
「鴎外などの日記は、事実だけなので腐らない。私の日記は、……腐ってもいい。いや、腐っていい。」
(高見順の日記)
何かピリッとしない。何となく靄がかかっているようで、やっぱり頭がボーッとしている。胃がシクシク痛んでいる所為か、この寒さの所為か、髪が伸び過ぎている所為か。
日記をつけたいと思う。〈日記〉というものをつけたいと思う。なるべく事務的なものがよい。考えた事ではなく、あった事を。曖昧な事ではなく、確実な事を。どこへ行ったとか、何を食べたとか、そういう具体的な事を書き続けることによって、初めて〈本当の考え〉が生まれるのだと思う、きっと……。
正月の三日から働いている。四日から九日まで、自分の家で寝ることの出来たのは五日の夜だけ、後は稽古場で暗幕に包まって眠る。十日、銚子に宿泊し翌十一日公演、終わってその日流山まで移動、十二日公演、トラックで帰宅。十三日練馬公演。十四日から旅、フェリーで九州へ。福岡を中心に今日まで十一ヵ所で公演……。
つまらない。何の考えも生まれる気配はない。
海を渡って徳島で別班と合流。でも四国での公演は一日だけ、その後はまた九州。帰るのは二月の十九日。きっと、やっぱり何も生まれやしないだろう。
きっかけ。日記のきっかけ。思索のきっかけ。
「鴎外などの日記は、事実だけなので腐らない。私の日記は、……腐ってもいい。いや、腐っていい。」
(高見順の日記)
何かピリッとしない。何となく靄がかかっているようで、やっぱり頭がボーッとしている。胃がシクシク痛んでいる所為か、この寒さの所為か、髪が伸び過ぎている所為か。
日記をつけたいと思う。〈日記〉というものをつけたいと思う。なるべく事務的なものがよい。考えた事ではなく、あった事を。曖昧な事ではなく、確実な事を。どこへ行ったとか、何を食べたとか、そういう具体的な事を書き続けることによって、初めて〈本当の考え〉が生まれるのだと思う、きっと……。
正月の三日から働いている。四日から九日まで、自分の家で寝ることの出来たのは五日の夜だけ、後は稽古場で暗幕に包まって眠る。十日、銚子に宿泊し翌十一日公演、終わってその日流山まで移動、十二日公演、トラックで帰宅。十三日練馬公演。十四日から旅、フェリーで九州へ。福岡を中心に今日まで十一ヵ所で公演……。
つまらない。何の考えも生まれる気配はない。
海を渡って徳島で別班と合流。でも四国での公演は一日だけ、その後はまた九州。帰るのは二月の十九日。きっと、やっぱり何も生まれやしないだろう。
きっかけ。日記のきっかけ。思索のきっかけ。