会社は、今日から3年目である。
できることならば、15年くらい前の状況を取り戻りたい。若さが欲しいわけではない。今の居場所が、どうしても落ち着かないのである。

あの余計な病のお陰で、僕は人生をすっかり慌しいものにしてしまったが、もしもあの時、これほどまで生き続けられることが分かっていれば、きっと会社などという全くもって性分に合わない代物を立ち上げるような破目にはならなかったに違いない。僕が欲しいものは、というより捨て去りたいものは、名刺と、携帯電話と、極めてシンプルに繋がっていたはずなのに、いつしか複雑に絡んでしまった関係たちである。

会社の経営とやらに携わっていると、何もかもが単純にはいかなくなる。その全てを背負って、「社長」はひたすらに孤独であり、誰もそのことを気に掛けない。

孤独には慣れていた。というより、常に孤独であった。しかし、「社長」の孤独は異質である。
雑多なものがそこら中に積み重ねられ、崩れ散乱してもそのまま放置され、僕は息さえまともにできないでいる。そんな小さな部屋に押し込められて、毎夜呻き声を上げているのだが、誰も気づいてはくれない。
深夜になっても照明を煌々と照らし、全世界に向けてキーボードを打ち続けているのだが、その自らの行為に激しい嫌悪感を感じ、なにもかも切断したい衝動に駆られている。
この会社から身を引くことができれば、僕はPCのランケーブルを引き抜き、携帯電話のデータを消し去るであろう。自由になってもなおインターネットや携帯を捨てることに躊躇するほどには、まだ僕の精神も病んではいないはずだ。だから手遅れになる前に、「会社」という得体の知れぬ化け物から解放されたいのだが、しかし誰もそれを許してくれない。
分裂は、さらに進行しているらしい。しかし、蟄居することができないのなら、致命傷を避けるためには、このまま分裂を進行させていくより他の道はない。

今、僕が欲しているのは、何一つ置かれていない閑散とした部屋に、ポツ然と取り残された孤独なのである。